連載「明日の選択肢を変えるAgeTech!」では、アクティブチョイス世代の明日が変わるかもしれないAge Techの事例をご紹介します。日本最大のメディア総合イベントであるInterBee2025からお届けします。第二回は大学の研究室発、手型ロボットの最前線をお送りします!
“行けない、届かない場所でも自分の手が働いてくれる”そんな未来がもう目の前に。
その可能性を切り開くべく、東京大学と慶應義塾大学の二つの研究室が“手”に着目し開発したロボットを紹介します!
離れていても“手”が分離して歩く
手型アバター『Handoid(ハンドイド)』
ー東京大学 先端科学技術研究センター 身体情報学分野 稲見・門内研究室
なんといっても『Handoid(ハンドイド)』の凄さは、単なる遠隔操作ハンドを超え、操作する人の存在を物理的に分離・拡張させる“本体から離れて手だけが独立して動く”ということ。人型ロボットの一部としてだけでなく、本体から手が分離する全く新しいアバターの形なのです。さらに注目すべきはその用途の広さ。従来の人型ロボットでは難しかった狭い場所での作業や危険地帯での活動、介護・生活支援など、柔軟で精密な“人の手”の動きが求められる領域へも進出できるのです。VRやARと連動させれば、離れた場所にいながら“そこにもう一人の自分の手がいて作業をしてくれる”という感覚も得られる、物理的な制約を超えた体験価値と実用性を両立させたポテンシャルの高さに、今後の進化も期待したい。
ユーザーが首にかけた装置が手の動きを読み取り、ロボットが動く仕組み。手首を回転させたり物を掴んだり、握手をすることも!アームで届かないところへは、手首から切り離して指を使って歩くように移動。 “生き物みたいに動くロボットの手”にびっくり。
まるで未来のマジックハンド!
空間内で手が拡張する『ROomBOT:(ルームボット)』
―慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 Embodied Media Project

“部屋そのものが支援ロボットとして人をアシスト”という新たな視点からアプローチした、自立を支える生活空間を実現するシステム。天井に取り付けたケーブル駆動モーターで空間内を自在に移動できる、ユーザーの“もう一つの手”として機能してくれるロボットハンドが誕生しました!操作は簡単。手首と指に装置をはめて、天井に吊した手のクレーンと連動させるとユーザーの手の動きに合わせてロボットハンドが動き、部屋内にある物体の操作ができます。例えばベッドに居ながらにして水を飲む、遠くに置いてあるリモコンを取るなど…。動くことに制約を抱える高齢者や車椅子ユーザーでも、他者に頼らず部屋のあらゆるところに“手が届く”自らの意思で行動することが叶う、夢のようなロボットです。遠隔操作ロボットを活用したサービス分野への展開も期待されており、社会参加の新しい形を切り開く可能性を秘めています。
実際に動かしてみると“よくできたクレーンゲームみたいな”感覚。動きのコツさえ掴めば、ぬいぐるみやティッシュなど薄くやわらかな物まで…つかんで自分のところまで持ってくることが可能に。研究者の太田さん曰く「手の一部と感じるにはロボットが人の動きを検知してから実際に動き出すまでの反応時間をできるだけ抑えることが重要。それによって自分の手の延長としてスムーズに動くと感じることができる」とのこと。
▶プロジェクト詳細リンクはこちら
https://www.embodiedmedia.org/projects/roombot
どこにいてもできないことを補える
身体の拡張と社会参加の可能性を同時に広げる
テクノロジーが未来を変える!
たとえば──
・遠隔地の家族の生活支援や見守り
・体力的な不安があっても仕事が続けられる
・介護者・医療者・研究者の負担軽減
・いくつになっても“誰かの役に立っている”という自信と生きがい
・趣味や活動の継続、社会とのつながりの維持
などなど。
身体が思うように動かなくても、“相棒のようなもうひとつの手の存在”が人生の選択肢を広げてくれる未来。“できなくなることを減らす”のではなく、“できることを自分のペースで増やしていける”社会がすぐそこまで来ています。
Text 安並 まりや

安並 まりや
株式会社 博報堂
新大人研
博報堂という広告会社で、新大人研という50代以上の生活者に関する調査・研究やマーケティング支援を行っています。



































