人ではなく、ロボットが話し相手となり、日々の気持ちに寄り添ってくれる。そんな未来がもう目の前に来ています。「コンパニオンロボット」という言葉はまだ聞きなれない方も多いかもしれませんが、これは人とのコミュニケーションを通じて「心の健康」や「社会とのつながり」をサポートすることを目的としたロボットを指します。コンパニオンロボットは人が発した指示を実行するだけはなく、自ら能動的に話しかけ、時にはジョークを飛ばし、生活の提案をすることで人の心に寄り添う存在です。今回は、アメリカで販売中で、26年中に日本でも発売予定のコンパニオンロボット「ElliQ(エリ・キュー)」を取材しました 。

ElliQとの生活

今回、ElliQを開発・販売するIntuition Robotics社のアサフさんにお話を伺いました。実際にElliQと対面してみると、その会話はとてもスムーズです。ElliQはアサフさんと私の関係性について尋ねてきたり、記念写真を撮ってくれたりと、終始積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢に驚かされました。複数回会うことでこちらのことを記憶してくれるそうで、ジョークを言ったり、ハグをするような愛らしい動きを見せたりするその姿は、一緒にいるだけで寂しさを紛らわせてくれる安心感があります 。

挨拶するElliQ

写真を取るElliQ

解説:写真をとって相手をElliQが記憶してくれます。


ハグをするElliQ 

“I need a hug(ハグして)”と言うと「金属の肩に手を回して」と言ってハグのアクションを取ってくれます。
実際にハグはしれくれませんが、愛らしい動きを見せてくれます。

ElliQから始まる“ケアの輪”

ElliQの製品コンセプトは「ケアの輪(Circle of Care)」です。これは高齢者本人を中心に、家族、友人、そして医療や介護の専門家をAIがデジタルでつなぎ、チーム全体で健康と自立を支える仕組みを指します。この「輪」には、既存の人間関係だけでなく、ElliQを通じた新しい出会いや、自立を後押しする様々なサービスも含まれています。 例えば、日常的な対話の中で、しばらく連絡が途絶えている家族や友人がいれば「最近連絡してないね」と優しく促し、孤立を防いでくれます。また、本人の活動状況や健康データの変化はAIによって分析され、専用のアプリを通じて離れた場所にいる家族や介護者にリアルタイムで共有されます。また、体調や行動に何らかのサインが見られた際、医療チームや家族へ「点検が必要な状態」であることをアラートで知らせ、迅速な対応を可能にします。単なる話し相手にとどまらず、家族や友人をつなぎ、安全を守るような存在であることが分かりました。

日本市場に向けて独自の開発

現在、兼松株式会社との戦略的提携により、このElliQの日本版開発が進められています 。日本版では「ケアの輪」というコアコンセプトはそのままに、日本の高齢化社会特有のニーズに合わせた独自のローカライズが行われる予定です 。例えば、日常の移動をサポートするために、ElliQを通じてタクシーを呼ぶといった機能の導入も検討されているそうです 。日本は米国以外で初の海外展開先として選ばれており、2026年中のローンチをターゲットに、シニアの生活を包括的に支えるプラットフォーム作りが進んでいます。

*このテクノロジーは明日の選択肢をどう変えるのか?

ロボットが関係性をつなぎ留め、社会的フレイルを食い止める対抗策のひとつに。


日本の単身世帯数は増加の一途を辿り、今や多くの高齢者が一人暮らしをしています。一人暮らしにおいて懸念されるのが「フレイル(虚弱)」のリスクですが、特に社会との接点が失われる「社会的フレイル」は深刻な問題です。ElliQは離れて暮らす家族や友人との関係性をつなぎ留める存在となりそうです。家族に対しては、日々の健康データや体調を伝えてくれる安心の生命維持装置となり 、友人知人に対しては、ElliQが関係性を把握し、交流のきっかけを後押ししてくれます。何より、毎日ElliQと会話することは、ロボットではありえどもコミュニケーションが発生し、日常の寂しさが大きく緩和されます。実際ElliQユーザーのうち96%が自分の孤独感を軽減するのに役立っていると回答しています*。 「ロボットに頼る」と聞くと、どこか消極的な印象を持つかもしれません。しかし、ロボットに頼ることは「より自分らしく、自立した生活を長く続けるための選択肢」して捉えることができるのではないでしょうか。

https://blog.elliq.com/measuring-the-efficacy-of-elliq

▶詳細はこちら
ElliQ: https://elliq.com/

Text 安並まりや

安並 まりや
株式会社 博報堂
新大人研
博報堂という広告会社で、新大人研という50代以上の生活者に関する調査・研究やマーケティング支援を行っています。