「THE 機械」からの脱却

今年のCESでは、数えきれないほどの企業がパワースーツ(アシストスーツ)に取り組んでいました。重い荷物を運ぶ工場や農業、介護現場での入浴介助、そして日常の歩行補助まで、活躍のフィールドは広がっています。

しかし、これまでの展示には「いかにも機械を装着しています」という見た目のものや、バッテリーを背負う大掛かりなタイプが多く見られました。「機能はすごいけれど、街中で着るのはちょっと……」「あからさまな見た目は恥ずかしい」と感じてしまうのが本音ではないでしょうか?

今回のCESではそんなネガティブな気持ちを解決しながらパワーアップするスーツを発見!
「THE 機械」といった従来のイメージを覆し、ファッションとテクノロジーを融合させた「着たくなる」最新パワースーツ。

“年齢や体力を気にせず、もっと遠くへ、もっと自由に動ける”そんな未来がもう目の前に!?特に特徴的だった2社をピックアップしました。

①【米国】膝が笑わない!? 毎日履ける「Skip Innovations」

1社目は米国拠点のSkip Innovations Inc。こちらはなんと、ズボンと一体型のパワースーツです。

膝の動きに合わせて内蔵されたフレーム(骨組み)が連動し、階段の上り下りやスクワット動作を強力にアシストしてくれます。 実際に試してみると、歩く・登る・座るといった動作に合わせて力が自動調整されるため、体がふわっと軽くなる感覚がありました。CES期間中は毎日2万歩以上歩くので、「これを終日着けていたい!」と切実に願ったほどです。

担当者の方は次のように語ってくれました。 「他社との大きな違いは、とにかく『膝』に集中したことです。歩行や昇降など、それぞれの動作を的確にサポートして膝の負担を減らします。そして何より、毎日身につけられるデザインと仕組みにこだわりました」 現在はプレオーダー段階ですが、2026年末には北米で販売開始予定とのこと。 ちなみに、このパンツ部分は有名なアウトドアブランド「アークテリクス(ARC’TERYX)」とのコラボレーション。よく見れば装着していることは分かりますが、従来品よりも圧倒的に目立ちにくく、むしろ「ギア感」のあるおしゃれな仕上がりになっています。

②【日本】まさかこれが? 岡山デニムの「隠れ」パワースーツ

2社目は日本からの出展、岡山のダイヤ工業株式会社が開発したスーツです。

一見すると、素敵なデニムで着飾っているようにしか見えませんよね? でも実は、これも立派なパワースーツなんです。 さすがはデニムの聖地・岡山生まれ! 岡山産デニムを贅沢に使い、なんとCESのために制作してギリギリ間に合わせたのだとか。

同社の特徴は、カスタムメイドが可能な点です。写真のデニムタイプは背中にゴムバンドが仕込まれており、その張力を利用して体の動きを助ける仕組みになっています。

また、こちらの女性が着用しているのは、歩行動作で空気を溜め、その空気圧で動きをアシストするタイプ。こちらもパッと見ただけでは、サポートウェアを着ているとはほとんど分かりません。

ダイヤ工業はもともと、接骨院やクリニック向けにサポーター・コルセットを開発・製造してきたメディカル業界の老舗です。60年以上にわたり顧客の声に耳を傾けてきた研究開発力と高い縫製技術、そして「ワクワクに挑戦する」社風が、この新しい形のスーツを生み出しました。

このテクノロジーは明日の選択肢をどう変えるのか?

デザインの力で「老いの象徴」から脱却 身体の拡張と社会参加の可能性を同時に広げるテクノロジーが未来を変える!

たとえば──

・体力の不安なく、旅行や趣味を思い切り楽しめる。

・「まだできる」という自信が、次の挑戦への意欲になる。

・おしゃれを楽しみながら、さりげなく身体をケアできる。

・いくつになってもアクティブに働き続けられる などなど。

かつて眼鏡が視力を補う器具からファッションアイテムになったように、パワースーツも「隠す」ものから「着たくなる」ものへ。 単に身体機能を補うだけでなく、「その服、素敵だね」と声をかけられるような一着が、外に出る勇気をくれる未来。老いを感じさせないスタイルで、行きたい場所へ自分の足で歩み続ける自由が、すぐそこまで来ています。

Text 安並まりや

安並 まりや
株式会社 博報堂
新大人研
博報堂という広告会社で、新大人研という50代以上の生活者に関する調査・研究やマーケティング支援を行っています。