連載「明日を変えるAgeTech!-CES編-」では、アクティブチョイス世代の明日が変わるかもしれないAgeTechの事例を、世界最大級のテクノロジー見本市であるCESからお届けしてきました。
最終回となる今回は、身体の不自由からユーザーを解放する革新的なテクノロジーをご紹介します。

歳を重ねる中で体の自由が利きにくくなることは、避けがたい現実の一つです。身体の自由が制限されることは、日常生活において「できること」に制限がかかることを意味します。そのような不自由な状態にあっても、自らの意思でできることの制限を取り払いたい。そんな想いから開発されたテクノロジーが登場しています。

耳に装着するだけで、身体の不自由を解放するNaqi Logix

耳に装着するだけで身体の不自由を解放するとはどのようなことか、まずはこちらのデモ動画をご覧ください。



解説:目の動きと顎をかみしめるなど顔の微弱な動きでパズルをしたりネット検索をしたり。

一見するとリモート会議などで使用される一般的なイヤホンのような形状ですが、その内部には高度なセンサーが搭載されています。このデバイスは、以下の3つの機能を通じて、顔の動きと音声でPCなどのデバイスを操作できる仕組みになっています

1.繊細な生体信号をキャッチ:顔の筋肉のわずかな動きで、筋肉から発生する電気信号(EMG:筋電図)を検知します。

2.動きを独自のコマンドに変換:眉を動かす、あごを噛みしめる、まばたきをするといった動作が、マウスのクリックやカーソル移動などの操作コマンドとして機能します。

3.平面だけでなく3D空間でのコントロールも可能:上下・左右・前後の3軸(6方向)を自在に操れるため、PC操作だけでなくドローンやロボットアーム、車椅子の操作も可能です。さらに、音声によるフィードバックもあり、歩行中でも周囲に気づかれずに操作することが可能になります。

この技術の高度な操作性を実証するために、フライトシミュレーターを用いたデモンストレーションも行われました。

解説:特別な訓練を受けずとも操作が可能とのことでしたので、実際に体験させていただきました。

片耳にイヤホンを装着し、簡単な調整を行うだけですぐに操作を開始できました。あごや目の動かし方には多少のコツが必要でしたが、次第に慣れていき、最終的にはPC画面上のカーソルを動かせるようになりました。

Naqi Logixが様々なものに入り、一人でできることが増える未来

このテクノロジーは、開発者が四肢麻痺(ししまひ)となった友人のために一念発起して開発を始めたそう。現在はまだ開発段階にありますが、使用事例をご紹介いただきました。例えば、5年間寝たきりだった男性がこのデバイスを装着したことで、5年ぶりに自らの意思でPCを操作し、AutoCADのような複雑なソフトウェアを動かすことが出来るようになりました。このようなテクノロジーが介護の現場で導入されれば、夜中に2〜3時間おきに介護者にベッドの角度を変えてもらっていた患者が、自力でベッドを操作できるようになり、介護者である家族の生活も大きく変わります。
Naqi Logixは、今後12〜18ヶ月以内にはパートナー企業を通じて市場に出る予定です。将来的には、あらゆるデバイスにこの技術が搭載されることで、身体が不自由な方が一人でできることを増やせる世界を目指しています。

これまでのバリアフリーの設計思想は、不便さや苦痛といった「ペイン」を解消することに主眼が置かれてきました。また、どちらかといえば介護者など周囲の負担を軽減することに主眼が置かれ、被介護者本人が「やりたいこと」を実現させるという視点が、十分ではなかったのかもしれません。 Naqiの技術は、身体の微細な動きによって様々な機材を自分自身の意思でコントロールできるという点において、テクノロジーを用いたバリアフリーを「能動的」なものへと進化させています。また見た目においても、大きな器具やヘルメットなどを被ることなく、外見上は「周囲の人と同じように見える」状態で自立できるデザインを重視しており、様々な面でユーザーの尊厳を尊重するものとなっています。

*このテクノロジーは明日の選択肢をどう変えるのか?

受動から能動へ、やりたいを叶えるバリアフリーの進化



これまでのバリアフリーの設計思想は、不便さや苦痛といった「ペイン」を解消することに主眼が置かれてきました。また、どちらかといえば介護者など周囲の負担を軽減することに主眼が置かれ、被介護者本人が「やりたいこと」を実現させるという視点が、十分ではなかったのかもしれません。 Naqiの技術は、身体の微細な動きによって様々な機材を自分自身の意思でコントロールできるという点において、テクノロジーを用いたバリアフリーを「能動的」なものへと進化させています。また見た目においても、大きな器具やヘルメットなどを被ることなく、外見上は「周囲の人と同じように見える」状態で自立できるデザインを重視しており、様々な面でユーザーの尊厳を尊重するものとなっています。

▶詳細はこちら
Naqi Logix : https://www.naqilogix.com/

Text 安並まりや

安並 まりや
株式会社 博報堂
新大人研
博報堂という広告会社で、新大人研という50代以上の生活者に関する調査・研究やマーケティング支援を行っています。